2023.04.27
と、聞いたらびっくりするでしょうか。
実は
帝王切開などを除いて、正常分娩は健康保険の3割負担とはならないのです。いわゆる「病気」ではないからというのが理由です。
そんな殺生な…。次世代を担う赤ちゃんのため、大変な思いをするのに…。全額負担しなければならないの?と心配に思われるかもしれませんが、ご安心ください。
健康保険の「療養の給付(3割負担での診療)」が受けられない代わりに「出産育児一時金」というものがあるのです!!
出産育児一時金とは、出産したときに「1児につき50万円」が支給される健康保険の制度です(在胎週数第22週未満の出産の場合や、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は48.8万円の支給となります)。
2023年3月までは「1児につき42万円」でしたが、出産費用の推計額等をもとに2023年4月より引き上げられました。
多胎児を出産した場合には、出産された胎児数分だけ支給されますので、例えば双子の場合は、2人分が支給されます。
出産するご本人が勤務先の健康保険に加入している場合はもちろん、夫の加入する健康保険の扶養に入っている場合や、国民健康保険に加入している場合も、「出産育児一時金」を受け取ることができます。
※出産育児一時金における「出産」とは、妊娠85日(4カ月)以後の出産と定義されますので、この要件を満たしている場合は、早産や死産(流産)であっても対象となります。
医療機関等へ費用を支払った後、妊婦さん自らが健康保険へ請求するという方法もありますが、医療機関等が直接健康保険へ請求し、妊婦さんが一時的に費用負担をする必要がないようにする場合がほとんどです。
医療機関窓口で支払うのは、出産育児一時金の支給額である「50万円」を超える費用だけとなります。これを「直接支払制度」といいます。
直接支払制度を利用される場合には、出産を予定されている医療機関等へ、退院するまでの間に「直接支払制度の利用に合意する文書」の内容に同意していただく必要があります。
できるだけ早い段階で、出産を予定している医療機関等に確認しておきましょう。
なお、出産費用は50万円を超えることが多いですが、もし50万円を下回った場合は差額分について健康保険へ請求が可能です。
加入する健康保険によって異なりますが、数か月後に健康保険から自動的に申請書が送られてくる場合があります。
この場合は、必要事項を記載して健康保険に送り返すだけです。
すぐに差額が欲しい!という場合には、健康保険から案内が来る前にも申請が可能です。
この場合は、出産したことについて医師(または市区町村)の証明を受けたり、医療機関等からもらえる明細のコピーを用意したりと、多少の手間が発生しますのでご注意ください。
※直接支払制度を利用しない場合も、医師(または市区町村)の証明と、明細(領収書)のコピーが必要となります。
小規模な医療機関では、直接支払制度に対応しておらず、「受取代理制度」というものを案内される場合があります。
こちらは、妊婦さん自身が健康保険への申請を行わなくてはならないものの、やはり出産費用全額を一時的に支払う必要はなく、50万円との差額を支払うだけで済む制度です。
もちろん、出産費用が50万円を下回る場合は、差額の支給が受けられます。
直接支払制度と違い、既に自身の口座情報などを記載して申請していますので、改めて申請する必要もありません。
気を付けなくてはいけないのが、申請を出産予定日まで2カ月以内に行う必要があることです。
うっかり申請期限が来てしまい、窓口での全額支払いが必要になってしまうことのないよう、注意しないといけませんね。
出産育児一時金は、医療機関側から案内があることがほとんどですが、しっかり制度を理解して、マネープランを考えましょう。
手間はかかりますが、あえて直接支払制度も受取代理制度も利用せず、クレジットカードで費用を支払い、ポイントをためる方もいらっしゃいます。
出産後も現在の仕事を続けるかと同様に、一律の正解はありません。
《 監修 》
木幡 徹(こはた とおる) 社会保険労務士
1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。スタートアップ企業の体制構築やIPO準備のサポートを主力とし、企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。
▶HP https://fe-labor-research.com/