2020.07.20
妊娠初期にはいろいろ不安だったことも、妊娠中期には、安定期に入って落ちつき、身体も心も妊婦であることに実感が湧いてくるでしょう。しかし、後期になれば、胎児の成長によって身体を動かすことも大儀になり、様々な不調も現れます。
妊娠中期は、初期よりも基礎体温が下がりますが、乳房部周辺は高温になり、上半身と上肢の皮膚温が上がります。一方、下半身は胎児の成長によって骨盤内の静脈が圧迫され、血流が悪くなるので冷えやすくなり、足のむくみも起こります。さらに、発汗や敏感肌によってかゆみ、湿疹などの皮膚トラブル「妊娠性痒疹(ようしん)」が現れることもあります。
妊娠後期になると、いよいよ胎児が大きくなり、妊婦自体の体重も増え、動悸や息切れ、貧血の症状が出る場合もあります。また、動くのがおっくうになるため、運動不足にもなりがちです。肥満になると、高血圧や糖尿病のリスクが高まります。
このようなマイナートラブルに対して、衣服は、体温調整や適度な運動を妨げないもの、肌に刺激を与えないものにする必要があります。
では、具体的に妊娠中期から後期の衣服選びはどうしたらよいでしょうか。
妊娠初期の注意事項と重なることも多いので、まず、妊娠初期の記事をもう一度読み返してみてください。
次に妊娠中期から後期に必要なことをチェックしましょう。
(▶女性の身体の仕組みから考える衣服の選び方 ~妊娠初期~)
①上半身の体熱を放散できるように、通気性がよく吸湿性、放湿性の高いものを選ぶ。
綿、シルク、ウール、麻などの天然繊維のもの、化学繊維との混紡でも、機能性素材等、熱水分の放散に優れたものが適している。デザインは、通気性と動きやすさを考えて、おなかまわりだけでなく、上半身や袖もややゆったりとしたものを選ぶとよい。
②下半身は冷えない素材のものを選ぶ。
冬場は、保温性が高いウールを。夏場は綿・麻などを着るとよいが、冷房に備えて、大判のシルク等のスカーフを用意し、腰に巻いたり、膝がけにしたりするとよい。むくみや血流障害を防ぐためには、加圧ソックスの着用も有効。
③インナーを含め、肌に刺激のある素材は避ける。
綿、シルクなどの自然素材や、高機能素材のウェアにも着目し、上質なものを求める。
④過度な装飾は、ひっかかりや転倒の原因にもなるため、シンプルで、身体を動かしやすいものを選ぶ。
このようにいろいろな注意点がありますが、できるだけ、実際に店に出かけて、実物を試してみましょう。デザインだけに惹かれて選ぶのではなく、店員さんによく相談して、実用性をじっくり検討してみてください。
参考資料 女性の生理的特性と衣服の温熱的快適性 佐藤真理子
繊維学会誌 第75巻 第6号
≪取材協力≫
佐藤 真理子(さとう まりこ)
文化学園大学 服装学部・大学院生活環境学研究科 教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修了。博士(学術)。放送大学・千葉大学ほか非常勤講師を経て現職。専門は衣服の快適性と機能性。著書に『被服学事典』(朝倉書店/分担執筆)、『衣服の百科事典』(丸善出版/分担執筆)ほか。日本家政学会、繊維学会等に所属。
《 監修 》
橋爪 あき(はしづめ あき) 睡眠改善インストラクター
慶應義塾大学卒業。
一般社団法人日本眠育普及協会代表、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、
日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、NPO法人SASネットワーク理事。
睡眠知識の広報活動、講演、執筆、メディア・企業の企画協力などを行う。
▶HP https://min-iku.com/