2020.07.13
衣服は第二の皮膚ともいえる存在で、インナーもパジャマも、身体に対する大事な役割をもっています。特に妊娠中は、身体の変化が大きいため、その役割にしっかり対応できる製品を選ぶことが肝心です。
インナーには、汗や皮脂、垢などの汚れを吸収し、肌を清潔で心地よい状態に整える役割があります。特に妊娠中は、体温が高くなり、発汗が増えます。また、母体のホルモンと胎児胎盤系ホルモンの影響やストレスによって、肌が敏感になり、かゆみや湿疹が出ることもあります。乳房の周辺は、特に敏感になります。こうした身体の変化を考えると、妊娠中は、どのようなインナーを選べばいいのでしょうか。
① 吸湿性・放湿性に優れたもの
綿やシルク、吸汗速乾性に富む機能性肌着などが望ましい。
②圧迫しないもの
きついゴムなどが身体を圧迫するデザインのもの、特にブラジャー、ショーツ、スパッツ類はよく注意する。ゆとりがあり、着ていて不快感のないものを選ぶ。
③摩擦や静電気が発生しないもの
肌触りがよく、タグや縫い目が肌を刺激しないものを選ぶ。静電気対策には柔軟剤などで対応する。
④季節に合った素材であること
天然素材であれば、夏場は、綿や麻、ガーゼなど、冬場は保温に優れた綿、ウールなどがよい。シルクは季節を問わず快適である。また、様々な要求性能を満たす高機能インナーも上手に活用する。
睡眠は身体の成長と修復、心のケアを担う重要な役割があります。まして、妊婦は胎児を抱えている身ですから、十分な睡眠をとることが必要です。睡眠の質を高めるには、いろいろな条件がありますが、良いパジャマを着ることも大切な条件のひとつです。
入眠時は副交感神経を優位にすることが重要で、心身がリラックスしていれば、良い睡眠状態を保つことができます。また、寝返って姿勢を変えることは、血流や筋肉、骨への圧迫が偏らないようにすると同時に、床の中の温湿度調整になります(睡眠中、発汗は盛んに行われています)。
つまり、リラックスできて、寝返りを妨げないパジャマを選ばなくてはなりません。妊娠中は、月数が進むにつれ、体形の変化で寝苦しさが増し、ストレスによって不眠気味になることもあるため、なおさら、良質なものを身に着けることが大事です。
① 部屋着をパジャマの代用にしない
② インナーと同様に吸湿性・放湿性、通気性の良いものを選ぶ
夏場は、汗を吸い素早く乾く素材、ヒンヤリする素材などを選択し、天然素材であれば、綿・麻・ガーゼ・シルクなどもよい。冬場は保温性の高いもの、ウール混紡やガーゼも好ましい。
③ サイズはゆったりめにする
襟、袖口、ボトムの裾がぴったりしていない、ウエストがきつくないもの(調節できるものが理想的)を選ぶ。
④ 寝返りがスムーズにできるように、すべりのよいもの、かさばらないものを選ぶ
生地の織が凹凸になっているもの、ヒダやリボンなどの飾りの多いものは避ける。
⑤ 副交感神経を優位にしリラックスするために、羽織って心地よさを感じるもの、色や柄はやさしくシンプルなものにする
⑥足の冷え防止に、靴下をはいて寝るのは体温調節上望ましくない
以上のことに注意してインナーとパジャマを検討しましょう。色あいやアクセント部分は好みに合わせて、良質の製品を見極めつつ、楽しんで選んでみてください。
参考資料
・女性の生理的特性と衣服の温熱的快適性 佐藤真理子
繊維学会誌 第75巻 第6号
・衣服と気候 田村照子著 気象ブックス039 成山堂書店
≪取材協力≫
佐藤 真理子(さとう まりこ)
文化学園大学 服装学部・大学院生活環境学研究科 教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修了。博士(学術)。放送大学・千葉大学ほか非常勤講師を経て現職。専門は衣服の快適性と機能性。著書に『被服学事典』(朝倉書店/分担執筆)、『衣服の百科事典』(丸善出版/分担執筆)ほか。日本家政学会、繊維学会等に所属。
《 監修 》
橋爪 あき(はしづめ あき) 睡眠改善インストラクター
慶應義塾大学卒業。
一般社団法人日本眠育普及協会代表、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定)、
日本睡眠教育機構上級指導士、日本睡眠学会会員、NPO法人SASネットワーク理事。
睡眠知識の広報活動、講演、執筆、メディア・企業の企画協力などを行う。
▶HP https://min-iku.com/