2020.08.03
お母さんが摂取した栄養はそのまま胎児へと行き渡るため、妊娠中の食事には特に気をつける必要があります。
食事から栄養を摂取することが大変重要になりますが、食事をする際にいくつか気をつけるポイントがあります。
体重増加を気にするあまり、十分な栄養が取れていない妊婦さんが多くいらっしゃいます。十分な栄養を取るには、カロリーだけでなく、栄養素の含有量なども意識して、不足しがちな栄養素をバランスよく摂取することも大切です。
また、現代の日本では調理済みの食品が多く売られていますが、中には賞味期限を長くするために添加物を加えているものもあります。添加物には摂取を続けると体に良くない成分が含まれていますので十分考慮してください。
また妊娠中は、胎児の発育への影響や感染症の危険性があるため、避けておきたい食品もあります。
妊娠中は免疫力が下がっているため、妊娠前には摂取しても問題がなかった食材でも、妊娠中に摂取すると食中毒や感染症を引き起こす可能性があります。特にリステリアと呼ばれる菌とトキソプラズマと呼ばれる寄生虫に対して注意が必要です。
リステリアは、火の通っていないモッツァレラチーズやリコッタチーズなどに存在している場合があり、摂取すると流産や早産の原因になる可能性があります。
ピザのトッピングのように、しっかり加熱すればリステリアによる食中毒を予防できます。
なお、日本国内で製造されたものや、輸入品でも加熱処理したプロセスチーズはリステリアのリスクが低いと考えられます。
トキソプラズマは肉類に存在している場合があり、これを摂取すると胎児に異常を引き起こすことがあります。
また、トキソプラズマは猫の排せつ物に存在することで知られていますが、生肉のほか、土にも動物の排せつ物から混じることがあるため、土のついた生野菜などはきれいに洗うようにしましょう。
感染すると、妊婦に目立った症状は出ませんが、流産や早産につながる可能性があり、中枢神経障害や眼の障害などの症状が赤ちゃんに表れることもあります。
加熱されていない肉として、ユッケや生ハムなどを知らずに食べてしまうケースも多いようです。また、レアのステーキなど、加熱が十分でない肉からトキソプラズマに感染し、胎盤を通じて胎児も感染する場合があるため、十分に注意しましょう。
魚はたんぱく質やカルシウムを含んでいるため、妊娠中も積極的に食べたい食材の一つです。
一般的に、魚に含まれる水銀量は健康に害を及ぼすほどの量ではないといわれていますが、一部の大きな魚は食物連鎖を繰り返すことで、水銀を体内に蓄積していきます。一部のマグロやメカジキ、クロムツなどは水銀量が比較的多いため、妊娠中は注意が必要です。
①貧血を避けるために、鉄分は積極的な摂取を心がけて
妊娠中は、お腹の赤ちゃんが成長するために多くの鉄分が必要になります。鉄分が不足すると貧血になりやすいので、積極的に取ることを心がけましょう。貧血は赤ちゃんの成長・発達だけでなく、出産時や産後のお母さんのメンタルヘルスにも影響を及ぼします。
鉄分の含有量が多くて食べやすい食材
・豚レバー
・ひじき
・がんもどき
②骨と歯だけではないカルシウムの必要性
カルシウムは、赤ちゃんの骨や歯の形成に不可欠です。
また、血液中のカルシウムはホルモンの情報伝達や筋肉の収縮など、様々な作用に関与しています。
日本人に不足しがちな栄養素ですので、意識して取るようにしましょう。カルシウムの1日の推奨摂取量(妊娠時)は650mgです。
カルシウムの含有量が多くて食べやすい食材
・干しエビ
・カタクチイワシ
・水菜
牛乳や乳製品などの動物性食品のカルシウムは吸収がよく、加熱しても栄養成分に変化がありません。また、ビタミンDやたんぱく質、酢やレモン、りんごなどに含まれるクエン酸と一緒に摂取すると、吸収率がアップします。
③ 葉酸は赤ちゃんの発育や造血に欠かせない栄養素
葉酸は胎児の発育を助け、先天性異常のリスクを軽減させるといわれています。非妊娠時より多く取るように心がけましょう。ビタミンB1(豚肉や穀類、豆類などに多く含まれる)やビタミンB2(納豆や乳製品、葉物野菜などに多く含まれる)と一緒に摂取すると、貧血の予防にも効果的です。
また、ビタミンC(ブロッコリーやじゃがいもなどの野菜や、キウイフルーツなどの果物に多く含まれる)と組み合わせると吸収率がアップします。水に溶けやすいので、スープにして食べるのがお勧めです。葉酸の1日の推奨摂取量(妊娠時)は480μgです。
葉酸の含有量が多くて食べやすい食材
・菜の花
・ブロッコリー
・納豆
妊婦さんにとって、食べることは育むことです。お母さんの食べたものが赤ちゃんを作ります。
《 監修 》
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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