2020.01.31
子どもという存在ができると、夫婦は新しい役割と関係性を築いていきます。女性は母親になり、男性は父親になります。
最近、育児を積極的にする男性のことを「イクメン」と呼んだりするらしいですが、育児は特別なことではありません。
なぜなら、父親も母親と同じく自分の子どもを育てることは当たり前だからです。出産・子育ては手伝うものではなく、二人で(もちろん、その他大勢の手も必要です)行っていくものですよね。
ただ、その当事者意識を妻の妊娠中から感じることは男性の場合とても難しく、男性は女性より「親になる」という意識が根付くのが遅い場合が多くあります。
男女は平等ではありますが、同質ではありません。女性は、10カ月かけて自分の体内で命を育み体験をもって次第に母親になっていきます。
男性は女性とは異なり身体的変化がないので、父親になるということが、いま一つピンとこないというのが正直なところだと思います。
そのため、「良い父親になる、目指そう」と頭では思っていても、妻の妊娠中に「何をどうしたら良いのかが思いつかない」「出産後、赤ちゃんが生まれた後の自分が想像できない」「父親になるために何をしたらよいのか分からない」などいろいろな思いが巡ることと思います。
いくらがんばっても身体は変わらないので、妊娠・出産をイメージすることは難しく限界があるかもしれません。
なので、考え方を変えてみましょう。父親にしかできないことがあります。
その辺りを私の方からアドバイスしたいと思います。
そもそも、父である前に夫です。子どもの前に、パートナーとコミュニケーションを図ることが大切です。どうしたら良い父親になれるかと、頭で考えるよりパートナーの気持ちに寄り添いましょう。
以下の、5カ条を実践すると、さらに夫婦の絆は深まるでしょう。
1 妊娠・出産・産後の知識を持とう
医学的な知識もさることながら、ネガティブなことも含め妊娠すると何が大変で、どのようなことに不安を抱きやすいのか知っておくことが大切です。
妊娠・分娩で女性の心身はダイナミックに変化します。今まで当たり前にできていたことができなくなったりもします。
一緒に両親学級などに参加して知識を得ましょう。
2 アドバイスではなく、共感をしよう。
妊娠中の女性は不安が大きかったり、些細なことで悩んだりします。
悩みに対し、「こうすればいいのでは」と、ついアドバイスをしたくなりますが、女性が求めているのは「そうか、大変だね」という共感であることが多いようです。
ですから、まずは共感をして、それから最良の方法を選べるようにアドバイスを行いましょう。
3 貴重な体験の数々を夫婦で共有しよう。
妊娠は女性にとって、素晴らしい経験です。そんな、貴重な体験を妻だけに独り占めさせるのはもったいない。
妊娠中にしかできないことをなるべく二人で一緒に経験して、感動を分かち合いましょう。
その経験は、これから始まる新しい家族の大切な思い出になるはずです。
4 行動で示してみよう。
マッサージや家事などをして、妻の身体の負担を軽くし、妊婦健診に付き添って精神的なサポートをしましょう。
黙っていても思いは伝わりませんから、行動で示しましょう。
5 子育ての夢をどんどん語りましょう。
これから始まる家族の物語をぜひたくさん話しましょう。
話すことでコミュニケーションが生まれ、また二人の絆も強くなっていくことでしょう。
自分の思いが伝わらないことはたくさんあります。ですから、伝える努力が必要です。
自分の感情や思いを伝える時には、「あなたが~だから~」と相手を責めるのではなく、「私は」で始まる、「I」メッセージで伝えましょう。
人には、自分を大切にしてほしいというニーズがあります。きっと、一番大切なパートナーだからこそ、自分のことを分かってほしいし、思いを共有したいのだと思います。しかし、自分のニーズを押しつけるばかりでなく、相手のことも尊重できる人でありましょう。
最初は、不自然な努力が必要かもしれません、しかしお互いが歩み寄ると、そのうちなじんでくるものです。話すこと、思いを伝えることを諦めないで「どうしてほしい?」と、問うことから始めましょう。
《 監修 》
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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