2020.12.14
マタハラ(マタニティーハラスメント)・パワハラ(パワーハラスメント)の事例は、産休を取得しようと申し出た途端、「無視されるなどの嫌がらせを受けるようになった」「そもそも産休を取らせてくれなかった」「妊娠を理由に退職を強要された」「育児休業から復帰後に、屈辱的な配置転換が行われた」など、後を絶ちません。
悪いのはハラスメントを行う側ですが、「自分も被害者になるかもしれない」という気構えは必要といえます。
では、実際に被害を受けた場合、どのように対処すればいいのか理解しておきましょう。
2017年1月より、男女雇用機会均等法および育児 ・ 介護休業法が改正され、企業は「妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」を防止する措置を行うことが義務付けられました。
ハラスメントがあってはならない旨の周知・啓発に加え、相談窓口の設置が義務付けられています。多くは人事労務系の社員が担当しており、連絡先等が明示されているはずです。まずは、そこに連絡してみましょう。
近年は電話だけでなく、メールやチャットツールでの相談ができるようにしている企業も目立ちます。
社内イントラ、全社員が利用するチャットツール、掲示板等でその情報が見当たらなければ、人事労務系の担当者か、上司に相談しましょう。
上司からハラスメントを受けているのであれば、さらに上の上司へ相談するといいでしょう。
ハラスメントに対し、真摯(しんし)に向き合う姿勢のある会社であれば、事実確認を行った上で、加害者への指導(悪質な場合は懲戒処分)と、被害者への配慮(加害者と距離を置いて働けるようにする、休業を問題なく取得できるようにするなど)が行われます。もちろん、それでもろもろのわだかまりが全て消えるわけではありませんが、少なくとも会社として最低限のことは、行ってもらえているといえるでしょう。
前述したような模範的な対応を、全ての会社が行っているとは、残念ながらいえません。
法律的な義務だからと、形式的に窓口を設置しているだけの会社もありますし、そもそも窓口すらない会社もあります。人事労務系の部署や上司に相談したところで、まともに取り合ってくれないことも、珍しくはありません。
また、相談には応じてもらえるものの、会社として「ハラスメントの事実はなかった」「申し立てが事実としても、ハラスメントとはいえないと判断した」という回答となることもあります。状況が改善されない、加害者が指導・処分されないことに対し、納得がいかないとうこともあるでしょう。
このように、相談に応じてもらえない場合や、相談結果に納得がいかない場合は、労働組合に相談すると、いろいろ対処してくれる可能性があります。ただ、このような相談に親身に応じてくれるかどうかは、その労働組合によるとしかいえませんし、会社に労働組合がない場合もあります。
また、相談して何らかの対処を求めるからには、組合員になる必要があるといえるでしょう。なお、労働者なら誰でも加入できる「ユニオン」と呼ばれる労働組合もあります。どんな業種でも、非正規雇用であっても加入でき、会社へ団体交渉を求めることができる組織です。ユニオンに加入するというのも選択肢としてはありますが、会社の前で拡声器を使った主張を行うなど、過激なユニオンも一部存在しますので、加入する際は本当に自分の望むスタイルで交渉してもらえるのか、十分に検討した方がいいでしょう。
会社に労働組合がない場合、または労働組合に相談しても解決しない場合は、労働局へ相談することが考えられます。
労働局は都道府県ごとに設置してある国の機関です。雇用環境・均等部が対応します。
また、各地域の労働基準監督署にも「総合労働相談コーナー」が設置してあり、女性の相談員が在籍していることもあります。相談すると、労働局から会社へ「助言・指導」という名目で解決を促すことなどの対応を行ってもらえます。
「役所へは相談しにくい」とためらわれるかもしれませんが、少しの勇気で状況が変わる可能性もあるので、解決に向けて行動していきましょう。
《 監修 》
木幡 徹(こはた とおる) 社会保険労務士
1983年北海道生まれ。大企業向け社労士法人で外部専門家として培った知見を活かし、就業規則整備・人事制度構築・労務手続きフロー確立など、労務管理全般を組織内から整える。スタートアップ企業の体制構築やIPO準備のサポートを主力とし、企業側・労働者側のどちらにも偏らない分析とアドバイスを行う。
▶HP https://fe-labor-research.com/