2022.02.15
妊娠4カ月は、「妊娠初期」の終盤になります。
このころ、子宮の中では胎盤が完成し、子宮の大きさは新生児の頭くらいになり、下腹部に少し膨らみも感じられるようになってきます。
お母さんの身体 にも、出産に向けて変化が表れ、高めだった体温が平熱に戻り、体が楽になってくるころです。妊娠前よりも胸の膨らみが大きくなり、乳輪の色が濃くなる人もいます。また、乳首周辺がかゆくなったりすることもありますので、保湿をしたり、マタニティブラに切り替えたりしましょう。
このころから、つわりが軽くなる傾向があります。
一気に食欲が戻り、食べ過ぎてしまうこともありますが、つわりの時に栄養が不足していたからと、たくさん食べる必要はありません。
この時期から体重増加が加速してしまうと、出産を迎えるころには体重が増えすぎてしまうので注意が必要です。
妊娠4カ月に入ると胎動を感じ始める人もいます。
しかし、妊娠5~6カ月頃に感じるようになる人も多いようですので、このころ感じることができなくても、心配する必要はありません。
初めて感じる胎動は、よくいう「赤ちゃんが蹴った」という感覚よりも、腸がグルグル…と動くような感覚と似ています。
お腹の赤ちゃんに話しかけたり、思いを共有したりして、赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しみましょう。
≪注意すべき病気と症状≫
①前置胎盤
子宮の下方に胎盤が完成してしまい、内子宮口の全部または一部を覆ってしまう状態のことをいいます。前置胎盤はその場所によって3つに分けられています。
・辺縁前置胎盤…胎盤の端が内子宮口に達している場合
・部分(一部)前置胎盤…胎盤が内子宮口の一部を覆っている場合
・全前置胎盤…胎盤が内子宮口の全部を覆っている場合
胎盤が完成する妊娠4カ月ごろは、もし前置胎盤である場合はそろそろ分かる時期です。
受精卵が着床した場所に胎盤ができるため、未然に防ぐことは困難です。
超音波検査で前置胎盤が疑われた場合、妊娠6カ月以降に経腟超音波検査で確定診断を行います。
妊娠30週ごろ までは、子宮が大きくなるにつれて、胎盤の位置が変わる可能性もありますので、過度に心配せず様子を見ましょう。出血など があった場合はすぐにかかりつけ医に連絡しましょう。
②流産
妊娠22週より前の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうことを流産といいます。
妊娠12週未満では、胎児側の要因が大きいといわれ、これを防ぐことは困難であるとされています。ただし、流産の半数以上は、原因が不明です。
また、お腹の張りや痛み・出血という症状がある中、赤ちゃんの心拍は確認できて妊娠を継続できている切迫流産といわれる状態もあります。
切迫流産 と診断された場合は安静第一で、お腹の張り止めの薬が処方されることもあります。外出や運動は控え、必要最低限の生活にとどめて様子を見ながら過ごします。
張りが治まらなかったり、出血が続いたりするようであれば、入院して張り止めの点滴を24時間受けながら、トイレ以外は絶対安静という指示がでることもあります。
③頭痛
妊娠4カ月ごろ は、分泌していた ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が減少し、つわりが落ち着いてくる時期ですが、そのころ頭痛を感じる人もいます。また、疲れやストレスから偏頭痛になる人もいます。この頭痛は、ホルモンの影響であることが多く、だんだんと落ち着いてきますのであまり心配はいりません 。とはいえ、つらいとき は自己判断で市販の薬を使わずに、かかりつけ医に相談しましょう。また、ストレスや疲れからくる場合もありますので、日常生活を見直し、スマホの使い過ぎなどにも注意しましょう。
④貧血
お母さんの体内では血液生産が活発になり、血液量がぐっと増えます。それに伴って血液中の白血球数は増えますが、赤血球数が減少、鉄分も不足し、貧血になる人が多いようです。必要時は、鉄剤の処方など もありますが、まずは食事内容の見直しを行いましょう。
①やっておくべきこと
そろそろお腹も目立ち始めますので、マタニティウェアや下着などの準備をしておきましょう。過度に高いヒールの靴は、転倒の原因になりますので、靴の見直しも必要です。
つわりで思うように動けなかった人は、体が楽になりお腹もさほど負担にならない大きさのこの時期に、下見や購入などを行っておきましょう。
(▶関連:女性の身体の仕組みから考える衣服の選び方 ~妊娠初期~)
(▶関連:妊娠中のインナー及びパジャマについて)
②やらないほうがいいこと
タバコとアルコールはこの時期だけではなく、妊娠中は控えましょう。
アルコールは胎盤を通して赤ちゃんに届き、知的・発育・運動などの障害になる可能性があります。タバコは血管を収縮させる作用があり、胎盤に酸素や栄養素が届きづらくなってしまいます。
そのため、発育不全になったり脳の発育に影響を及ぼしたりすることがあります。妊娠が分かったら、アルコールやタバコとは無縁の生活を送りましょう。
栄養や酸素を赤ちゃんに供給する臓器である胎盤は、15週~16週 ごろに完成します。
赤ちゃんは胎盤から臍帯(へその緒)を介して、栄養と酸素をもらい、二酸化炭素や老廃物を胎盤に排出します。
胎盤から栄養をもらうようになると、赤ちゃんの成長は加速し、妊娠12週~15週の1カ月間で身長・体重は一気に2~3倍に成長します。
妊娠11週ごろから、太ももの骨の長さである、大腿骨長(FL)で赤ちゃんの推定体重が分かるようになり、12週ごろには頭の横幅、おなかの厚み・横幅、太ももの骨の長さをもとに推定できるようになります。
13週ごろには内臓や手足などの器官はほぼ完成し、機能も発達します。羊水を飲み込み排泄したり、手足をよく動かしたりするようになります。
指を口でしゃぶるような様子を見せることもあります。
まだまだ小さい赤ちゃんですが、もうすでに外での生活に向けて練習を始めています。脳の神経経路も急速に発達し、欲望や感情をコントロールする大脳辺縁系の発達によって、快・不快の区別もつくようになります。
つらかったつわりも軽くなり、胎盤が完成して赤ちゃんも安定してくるころです。
お腹も少し膨らんできて、いよいよお母さんになるのだという実感がわいてくる時期です。
まだまだ注意が必要なこともありますが、適度な運動を取り入れリフレッシュしたり、マタニティウェアや育児グッズを購入したりと、徐々に母になる準備を行っていきましょうね。
《 監修 》
濵脇 文子(はまわき ふみこ) 助産師
大阪大学大学院医学系研究科招聘准教授。
助産師・保健師・看護師。
産前産後ケアセンターヴィタリテハウス施設長。
はぐふるアンバサダー。
妊娠から産後まで、一人一人に寄り添い幅広くサポートを行う。
また、自治体や企業とマタニティーソリューションの事業構築や講演・執筆活動、専門職の教育研究にも携わる。
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