2021.11.05
産後の生理は、妊娠中にストップしていた卵巣(らんそう)の働きがもとに戻ることで再開します。
生理の再開の時期にはかなり個人差がありますので、早くても遅くてもそれ自体に問題はありません。
一般的には、授乳をしていない方が再開は早く、産後1~2カ月で生理が戻ってきます。
一方、授乳をしている場合には、生理の再開は遅れがちです。
これは、母乳の分泌を促すプロラクチンというホルモンに排卵(はいらん)を抑える働きがあるためです。
ですが、特に体調に問題がなければ、産後1年くらいまでにはほとんどの人が生理を再開しています。
妊娠以前からPMS(月経前症候群=げっけいまえしょうこうぐん)と呼ばれる、生理の3~10日前にイライラして怒りっぽくなる、反対に落ち込んで泣いてしまうなど、体や心に現れる不快な症状に悩まされていた人は少なくありません。
出産後は、体がまだ回復途中なのに加え、慣れない育児で心身ともに疲れやすくなっています。そのため、出産後に再開した生理は、PMSの症状が重くなる傾向があります。
また、生理の長さ、経血(けいけつ)の量などが妊娠前と変わってしまう人もいます。
生理痛の程度も変わりやすく、人により軽くなったり重くなったりします。
再開後、生理周期が不規則だったり、妊娠前と比べて量が異常に多くなったりした場合は産婦人科を受診しましょう。
生理痛の薬については、一般的に使われているものであれば授乳中に使用してもまず問題はありません。
不安な場合は産婦人科で相談してください。
産後のセックスは、産後の1カ月健診で、子宮や外陰部(がいいんぶ)の傷の状態や会陰(えいん)の縫合跡、膣(ちつ)の状態などを内診し、問題がなければ医師から再開のOKが出ます。
許可が出ないうちのセックスは、膣や子宮内膜(しきゅうないまく)への感染や、分娩時の創部が離開するなどして感染が起こる恐れがあるので控えるようにしましょう。
出産を経験した後のセックスの再開は、お母さんにとって不安なものです。
人によっては痛みを感じることもありますし、育児で疲れていたり赤ちゃんのことが気になったりして、医師に大丈夫と言われても、すぐには気持ちが向かないこともあります。
セックスは、今後の夫婦関係にも影響を与えるデリケートな問題です。お互いの気持ちをよく話し合い、夫婦がどちらも納得した上で再開するのが好ましいでしょう。
セックスの再開までに夫婦で相談しておきたいのが、今後の家族計画です。
よく、「生理が再開するまでは、セックスをしても妊娠しない」と言われることがありますが、これは間違いです。
生理は、排卵してから約2週間後に始まるというのが正常な周期です。
そこで、出産後だから生理がないと思い込んでいると、実は「排卵後に受精(じゅせい)して、すでに次の妊娠が成立しているために生理が止まっている」というケースもあり得ます。
当面、次の妊娠は避けたいという場合、産後のセックスは、再開の最初から避妊をすることを忘れないようにしましょう。
また、早めに次の赤ちゃんが欲しい場合も、あまり急がないで。
特に、帝王切開(ていおうせっかい)で出産した場合は、子宮の切開部分が十分に回復していないと次の妊娠の際に子宮破裂(しきゅうはれつ)につながる恐れがあります。
そのため、次の妊娠まで最低1年は間をあけることが必要です。
なお、確実な避妊の方法とされるピル(経口避妊薬=けいこうひにんやく)ですが、ピルの成分である女性ホルモンは母乳に影響します。
授乳している場合はピルの使用を避け、コンドームや避妊リングで避妊を行いましょう。
お母さんにとって、出産早々に次の妊娠について考えるのはピンとこないことかもしれません。
でも、新しい家族が増えたタイミングだからこそ、今後の家族計画について話し合っておくことはとても大事です。
その際、パートナーには、生理が再開していなくてもセックスをすると妊娠する可能性があることを伝え、避妊についても相談して。
その上で、これから子どもは何人欲しいのか、できれば何歳くらい差があるのが好ましいかなどを話し合い、一緒に将来の家庭の姿を思い描いてみるといいでしょう。
《 監修 》
井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医
よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。
▶HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科