妊娠後期 (妊娠28週~妊娠39週前後)に気を付けたい『おなかの張り・痛み、性器の出血』【医師監修】

2021.12.10

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妊娠後期(妊娠30週前後)に増えてくるお腹の張り

妊娠中は子宮が大きくなるにつれ、おなかの張りを感じることが多くなり、妊娠30週前後からいっそう回数が増えていきます。

あまりに頻度が多い場合は、📖切迫早産(せっぱくそうざん)ではないかと心配になるのも無理はありません。

 

心配ないおなかの張りと、産婦人科を受診した方がいいおなかの張りを区別するのは簡単ではありませんが、おなかの張りを感じるたびに受診するのも現実的ではありません。

 

そこで今回は、受診するかどうかの目安についてまとめてみました。

様子を見てよい、おなかの張り・痛み・性器の出血

●おなかに張りを感じたが痛みはあまり強くなく、15~30分くらい安静にしていたら治まった。

一過性の張りで不規則なものであれば陣痛の可能性は低いでしょう。

長時間立ちっぱなしだったり、疲れやストレスを感じていたりすると起こりやすくなります。

 

 

 

●内診やセックスの後に、血が混じったような茶色っぽいおりものが出た

妊娠中は腟(ちつ)の粘膜や子宮口が出血しやすくなっていることがあります。

少量の出血で生理痛のような下腹痛を伴わず、半日程度で止まるようなら様子を見てもよいでしょう。

妊婦健診でポリープを指摘されている方も出血する回数が多くなることがありますが、やはり痛みを伴わない少量の出血であれば、原則として様子を見てもよいでしょう。

すぐに受診が必要な、おなかの張り・痛み・性器の出血

●おなかの張りが30分以上安静にしていても治まらず、出血や痛みを伴う

妊娠37週未満でおなかの痛みが周期的になったら、切迫早産の可能性があります。
出血を伴う場合はすぐに受診してください。
子宮口が開いていなければ自宅安静で済むこともありますが、子宮口が開く徴候が見られた場合は、そのまま入院になることもあります。

 

 

●前置胎盤(ぜんちたいばん)で、痛みがなく出血する

前置胎盤とは胎盤が子宮の出口をふさいだ状態ですが、超音波検査でも中期の終わりくらいまでは正確に診断ができません。
ほとんどの産婦人科で妊娠20週後半に胎盤の位置を経膣超音波で確認し、低めであった場合は要注意として対応します。
完全に子宮口を覆ってしまう場合(全前置胎盤)であれば分娩は帝王切開になりますし、出血も非常に多くなるため輸血が必要になることが多いです。
前もって自己血貯血をする施設もあります。

 

前置胎盤では、ほとんど痛みがなくても、少し子宮口が開いただけで出血(警告出血)があり、緊急に受診が必要になります。
出血がなくても、おなかが張ったらできるだけ安静にしなければなりませんし、妊娠後期から帝王切開の日まで入院する場合もあります。

 

 

●強いおなかの張りと痛み、出血があり、おなかが板のようにかたくなっている。胎動が感じられない

胎盤が、赤ちゃんが生まれる前にはがれてしまう常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)の可能性があります

酸素や栄養を供給する胎盤がはがれると、おなかの赤ちゃんは非常に危険な状態になります。

また、母体にも危険が及ぶことがあります。

常位胎盤早期剥離は見つけ次第「超緊急帝王切開」を行いますが、それでも間に合わないことがあるくらい大変な病態です。

 

胎盤がはがれた程度や位置によっては、母児ともになんの問題もなく終わることもあるのですが、妊娠20週台や妊娠30週前半での分娩では未熟児として生まれざるを得ず、出生後NICUでの長い治療が必要になることがあります。

 

また、低酸素の状態が長くなった場合は、脳性麻痺(のうせいまひ)などの可能性が高まります。

母体についても、術後に播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)などを起こしやすくなり、命に関わることもあります。

「もしかしたら」と思う症状があれば、できるだけ早く受診することが大切です。

出産が近くなったことを知らせるサインのおなかの張り・痛み・性器の出血

●妊娠37週を過ぎて、少量の血液がおりものに混じる

出産が近づいたことを知らせる、おしるしの可能性が高いでしょう。

おしるしの量や色、回数は個人差があり、おしるしから出産までの期間も1両日中から数日と幅があります。

 

ただし、出血が止まらなかったり強い痛みを伴ったりする場合は、他の病気も考えられるので、急いで受診しましょう。

 

関連記事:

📖【妊娠中】 おしるし や破水、陣痛はどんな症状?前駆陣痛から出産までの流れ【助産師監修】

 

●妊娠37週を過ぎて、おなかに不規則な痛みを感じる

陣痛のような痛みが来ても、しばらくすると遠のいてしまう場合は前駆陣痛(ぜんくじんつう)といいます。

陣痛の前段階で出産が近づいたサインです。

ただし、前駆陣痛と本当の陣痛の区別はつきません。

結果として分娩にならなかったら前駆陣痛だったと考えるわけで、ある程度規則的な痛みが来た場合は、分娩施設を受診して内診などで総合的に判断する必要があります。

 

 

 

●妊娠37週を過ぎて、おなかに規則的な痛みを感じる

最初は生理痛程度だった痛みがだんだん強くなり、間隔も一定になってきたら陣痛が始まったと考えられますが、前駆陣痛の可能性もあります。

 

目安としては、痛みの間隔が10分以内、または1時間に6回痛みが来るようになったら分娩施設に連絡しましょう。

しかし、間隔が狭まらなくても分娩が進んでいることもあります。

分娩が進行して児頭が下降してくると、多くの場合、仙骨周囲の圧迫により腰痛を自覚するようになります。

あまりにも腰痛が強い場合は、そのことを告げた上で、間隔が短くなくても受診したほうがよいでしょう。

 

 

おなかの張りや痛みの程度、性器の出血の状態などは、人によってかなり差があります。

「今までと違うな」と思う症状があったり、少しでも不安や気がかりがあったりしたら、早めに受診してください。

結果的にまだまだであったとしても、間に合わなくて自宅分娩などになるよりずっとましです。

ほとんどの分娩施設では、心配で何度も来院したとしてもきちんと対応します。

出産という一生に何度もない重大イベントですから、赤ちゃんのためにも遠慮してはいけません。

 

なお、安静にしていて治まった場合も、どんな様子だったかを次回の妊婦健診のときに医師に報告してください。

周産期管理において大切な情報になります。

《 監修 》

  • 井畑 穰(いはた ゆたか) 産婦人科医

    よしかた産婦人科診療部長。日本産婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医。東北大学卒業。横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンター、横浜市立大学附属総合周産期母子医療センター、横浜労災病院などを経て現職。常に丁寧で真摯な診察を目指している。

     

    HP https://www.yoshikata.or.jp/ よしかた産婦人科

     

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