2024.05.08
しかし近年研究が進み、むしろ「遅らせた方が食物アレルギーになりやすい」ことが分かってきたため、食物アレルギーのガイドラインや授乳・離乳の支援ガイド(以下、支援ガイド)もそれに合わせて変わってきました。
この記事では、にわとりの卵に焦点を当てて、卵アレルギーと離乳食についての考え方が変わってきた経緯と「うちの子はいつから卵を食べればいいの?」といったことについて解説します。
2015年には、英国から「乳児期にピーナッツを摂取した方が、ピーナッツアレルギーの発症が抑えられる」という研究が発表されました。
2017年には、日本から成育医療研究センターのグループによる卵アレルギーに関する研究が発表されました。
研究では、アトピー性皮膚炎の乳児を生後6カ月から卵を「微量摂取するグループ」と「摂取しないグループ」に分けて比較したところ、1歳の時、「摂取しないグループ」が卵アレルギーの発症38%に対し、「微量摂取するグループ」の発症は9%と発症が抑えられていました。
この研究成果を受けて日本小児アレルギー学会より「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言(以下、提言)」が発表され、「アトピー性皮膚炎のある乳児は卵摂取が遅いほど卵アレルギーを発症しやすくなるため、発症予防を目的として生後6カ月からの卵の微量摂取を推奨する」とされました。
ここで注意が必要なのは、根拠となった研究の参加者は「アトピー性皮膚炎のある乳児」であるということです。
提言の中にもアトピー性皮膚炎がない場合には支援ガイドに従うこととあります。
またこの提言では卵アレルギーの「予防」について提案されていますが、すでに卵アレルギーを発症したお子さんは対象としていません。
卵アレルギーがすでにある場合は、アレルギー専門の医師の指示に従ってください。
卵に関しては、前回の2007年版では「7~8カ月頃から卵黄1 個〜全卵は1/3個」だったのが、「5~6カ月から卵黄を試してみる」となりました。
まずはアトピー性皮膚炎の治療を受けて湿疹がない状態にしてから、アレルギー専門の医師に相談しながら6カ月から卵を微量から開始する。
支援ガイドに従い、5~6カ月から離乳食をお粥から始め、慣れてきたら卵黄を開始する。
それがきっかけかどうかはまだ結論が出ていませんが、卵による消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸炎)の子どもが増えてきています。
卵の消化管アレルギーは卵摂取1~4時間後に嘔吐することが典型的です。
即時型の食物アレルギーとは異なり、蕁麻疹などの皮膚症状や呼吸器症状はありません。
日本では、今まで牛乳による消化管アレルギーがメインでしたが、卵黄による消化管アレルギーが増えてきています。
卵摂取開始時期の変化のほかに、単に医師・医療者側の認知度が上がった可能性もあります。
卵による消化管アレルギーは多くの場合2歳くらいまでに食べられるようになりますが、疑わしい症状がある場合はアレルギー専門の医師にご相談ください。
《執筆・監修》
小島 令嗣(こじま れいじ)アレルギー専門医
防衛医科大学校卒業。
山梨大学大学院 総合研究部医学域
小児科専門医・アレルギー専門医・社会医学系指導医
専門分野:小児科学、アレルギー学、疫学・公衆衛生、母子保健
保護者の方が、休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師に電話で相談できるものです。
この事業は全国統一の短縮番号♯8000をプッシュすることにより、お住いの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。
厚生労働省ホームページ:子ども医療電話相談事業(♯8000)について